トゥルー・ディテクティブ/二人の刑事
2016/05/01

huluでやってる海外ドラマのなかで、この「トゥルー・ディテクティブ/二人の刑事」がかなり満足度が高かったので紹介したい。
アメリカ南部の田舎街で発生した奇怪な殺人事件を2人の刑事が17年の歳月をかけて追いかける、というのがストーリーの本筋である。映像の見た目も役者の芝居もかなり高品質で、尺も8話完結というタイトな長さなので、ドラマというより8時間の映画みたいだ。作品のテイストは、デヴィッド・リンチの「ツインピークス」とか、デヴィッド・フィンチャーの「セブン」とか、ああいう感じに近い。つまり、全体的なトーンは暗く陰鬱で、画的には青少年には刺激が強い系のやつだ。



この作品の何が凄いかって、やはりこの2人の主人公の魅力である。マシュー・マコノヒー演じるコール刑事と、ウディ・ハレルソン演じるハート刑事。特にマシュー・マコノヒーがヤバい。
仮に、この作品が「刑事モノ」というジャンルなのだとしたら、マコノヒーが演じるコール刑事みたいなキャラクターは今までに見たことがない。刑事の基本スタイルといえば拳銃と警察手帳だが、コール刑事は劇中でA4かB4サイズくらいのデカめのノートを小脇に持ち歩き、小まめにメモしたり絵をスケッチをしたりする。事件現場の時も周辺の聞き込みの時もノートをかかえているをため、同僚からは「税務署」という仇名で呼ばれたりする。彼が独りで暮らす自宅の部屋の壁には小さな鏡が貼ってあり、毎朝コール刑事はこの鏡に顔を近付けてジッと覗き込むのだが、この鏡の大きさが10円玉ぐらい(最後までこれが何なのかが謎)。これだけ聞くと内向的で暗いタイプの頭脳派の捜査官のように感じるが、彼の過去は極めて壮絶でハードボイルド。心に深い傷と闇を抱えており、それゆえ独特の価値観とポリシーを持ち、誰にも媚びない。
物語の展開とともに2人の刑事は事件の真相に近づいてはゆくが、見どころは事件の解決だけではなく、彼らの刑事という生き方、存在理由、行動原理についても、コール刑事の言葉で言及される。
彼らはなぜ、ここまでやらなければならなかったのだろうか?
そんな事を考えながら、何度も見返してしまう。見返すたびに、主人公たちに愛着を感じてしまっている。
脚本も一人が書いてて、監督もキャリー・フクナガの一人が担当しているということもあって、テーマの芯が全くブレず、全話通して強い作家性に貫かれた素晴らしい作品だと思う。