2019年夏、じわじわと崩れて開放される何かについて
2019/08/13
スターにはスポットライトが集まる。という前提があったうえで、じゃぁ逆に、スポットライトに照らされた者はスターになれるのか?という類の問いは、現代美術のジャンルにおいては最もスタンダードなコンセプトであり、最初はマルセル・デュシャンが、そしてアンディ・ウォーホルを経由し、最近ではバンクシーがすばらしく滑稽な騒動を日本国内でも起こしている。
この「スターとはなにか?」「有名ってなにか?」「権威とはなにか?」というテーマ、コンセプトがいまだに有効であるということは、つまり、まだ一般的に「…うーん、なんなんすかねぇ?」という理解度からフェーズが進展していないということの証拠だ。
スターの条件、ヒーローの条件、それはスポットライトに照らされ、その照らされた明るみを群衆が取り巻き、熱が大きく渦を巻いて拡がってゆく状態を作り出す者だ。
この熱い渦にはとてつもない価値がある。人々を動かすことができる力だ。
クライアントの商品を、ターゲットとなる顧客層にPRして購入してもらう仕事。
私は地方でそんな「広告」の仕事をしているのだが、クライアントには、広告にかけたコストに対する効果を求められるわけなので、できるだけ手堅い手法で成果を出したいところである。
うまくいく場合もあれば、そうでない場合もある。
いろいろ考えた結果、究極的には「催眠術」一番手っ取り早いんじゃないかと思うことがある。サブリミナル効果とかさ、そういう魔術のような手法だ。
人間の心を操る方法はいくつもあれど、なんだかんだ言って、テレビと新聞の認知効果はやっぱ桁違いの効果がある。
ただ、2年くらい前からYOUTUBE広告を利用するクライアントが急増しているのも事実。ともかく、映像による訴求効果というやつは凄まじいものだと、日々実感している。
もう2年も前の事だけど、SMAPの解散と「新しい地図」の事。
私達は、スポットライトを失ったスターの姿をみながら、ああ、彼らはスポットライトによって作りだされたスターだったのかも、というのを、じんわりと実感しつつあるのではないだろうか。
スターはテレビで作られる。毎日毎日刷り込まれるように登場する人物に対して、情や親近感が生まれるのは人間の心理だ。

「スポットライト=テレビ」という時代に生きてきた私達にとっては、テレビで姿を見ない者はスターではないという認識になるのは当然だし、その逆もまた然りなのである。

しかしながら、テレビの光がいよいよ失われつつある。今年の夏は特にそれを強く感じるきっかけになったことがいくつもあった。
なにかがじわじわと崩れて、開放されて来つつあるような気がする。
①山本太郎とれいわ新選組
山本太郎が4月に1人で旗揚げし10人の候補者を擁立、街頭演説ベースにYOUTUBE&SNS展開。寄付金4億円調達。結果はご存知の通り。

内容が優れているかどうか、実現性があるかどうかは、正直私にはわからないのだけれど、山本太郎の演説は面白い。というか、プレゼン内容がとにかくわかりやすい。
庶民に実感を持ってもらえるように噛み砕いて伝える。自分は何者で、何がしたいのかを伝える。私達に何をしてほしいのかを伝える。いわゆる「5W1H」をちゃんと伝えている。数字で評価している。出典も明らかにしている。基本中の基本がしっかりできている。その上で言葉に、声に、謎の魅力がある。聞き入ってしまう。たぶん、YOUTUBEに上がっている演説動画と会見は全部観た。
残念でならないのは、私は彼らの存在を投票日の後に知ったため、投票できなかった事だ。参加したかった。
この参院選の投票前の時期は、投票率を下げるために、畳み掛けるような勢いで、特に40代以下の層の関心を引きつけるような芸能スキャンダルが連日TVを騒がせており、「ああ、やられた!」と、あとになって目くらましされたことに気付かされた。吉本ってすごい。
つい最近だと、2019年8月7日の午後、日本ジャーナリスト協会主催で山本太郎の記者会見が行われたが、その数時間前に、なんと自民党の小泉進次郎と滝川クリステルの謎の官邸前会見がぶつけられた。おそらく各メディアの記者は「どっちに来んだよ」という踏み絵を踏まされることになったんだろうなと思う。自民もなり振り構ってらんない状況なのかな、すげぇ事するな、と震えた。
↑これやってるときこれ↓
このように、テレビは、スポットライトは、こういう風に使うのだ、ということが非常にわかりやすく伝わる一件だった。
②カジサックと西野亮廣
ユーチューバーになって100万人の登録者を獲得したキングコングの梶原のチャンネル。彼は確実にユーチューブのほうが面白いし、このカジサックのチャンネルには、有名な芸人がたくさん登場してじっくりトークをする。プロの芸人が次々にユーチューブに溢れ出てきた印象だった。
チャンネル登録者が100万人になる少し前に、キングコングの相方である西野亮廣が登場した回があって、その中で西野が「新しい表現を伝えると思っていたテレビが、伝統芸能の方に行ってしまったのが想定外だった」という旨を話すくだりがあるのだが、それがすごく腑に落ちるというか、納得してしまった。
すでに西野の方は、もはやただのお笑い芸人ではなく、あたらしい「何か」になっているわけだが、そんな西野に対して梶原は、ようやく自力で相方に追いつき、肩を並べられるという状況に達成感を感じているように見えて、別にキングコングのファンでもなんでもないのに、なんか良かったなと、素直に感じてしまった。テレビを捨てて、自分でやることにした芸能人の成功モデルを初めて見たような気がした。

③中田敦彦のYOUTUBE大学
オリラジのあっちゃんのほう、パーフェクトヒューマンのほうだ。
「やりすぎ都市伝説」や「しくじり先生」のときのプレゼンの面白さは前から知っててファンだったので、偶然ユーチューブで発見してからずっと観てる。
日本史、世界史、現代史、文学、偉人伝など、なんか東進のアレみたいな感じで、動画で講義してくれるコンテンツ。めっちゃわかりやすくて面白い。全部面白くて勉強になる。
この中田敦彦、ものすごい勢いで動き始めてて、れいわ新選組の山本太郎の援護射撃のようにも思えるタイミングで、日本の選挙の仕組みや税制の仕組み、法律の仕組みなども連日公開して、暗に自民党の痛いところを突く内容で話題になっている。動画は毎日21時に公開されているので、彼がどこまで行くのか毎日楽しみだ。
そして、この中田敦彦と西野亮廣はそれぞれ有料のオンラインサロンを運営していて、そのコミュニティの可能性と価値について議論している動画を昨日見つけたので貼っておく。面白い。
私たちは、ひょっとしてもっと自由に、大きく、面白く生きられるのかもしれない。
そんな、漠然とした期待感が、妙にリアリティを持って感じられる。
なんか上手く言えないけど、やっと来たか、という気がして嬉しい。そんな夏。