イーゴン自治区

なぜ「ほぼ日」は手帳だったのかしら

2019/09/12
WEBに関わる仕事に就いて10年以上経つが、この業界に入ろうと思ったのは、「ほぼ日」と「ブログ」と「SNS」に出会った事がきっかけだったりする。その頃「WEB2.0」という本が出て、それを読んだ直後に勢いだけで転職した。27歳の時だった。

あの頃からずっと疑問だった事がある。ほぼ日だ。
「ほぼ日刊イトイ新聞」は、なぜ「手帳」だったのか?

ほぼ日が今現在どういう感じになっているかフォローしきれていないが、随分前に書かれた本の中で「ほぼ日はクリエイティヴがイニシアチヴをとる、という優先順位を崩さずにビジネスとして成立することができるか?」という挑戦をしている、と、糸井さんは自身の著作の中で書いていた。
広告主やスポンサーからのフィーで運営すると、媒体が自分のクリエイティヴィティを最優先にした意思決定がしにくくなる。それは忖度っていうやつだ。

たしかに、ほぼ日には広告バナーなんてものはない。一時期キリンのFIREのバナーが一つだけあったが、そんなもんだ。

WEBメディアって、アクセス数や一般ユーザーのボリュームによって価値が図られ、それをベースに企業からの広告収益か、一般ユーザー向け有料サービスによる収益で、商売をするものだ、と、一般的には考えられていたが、ほぼ日はその収益モデルをせず、自社商品の物販で稼ぐ道を進んでいった。「ほぼ日手帳」だ。なぜ、手帳だったのか?

アマゾンが注目されはじめた頃、それは15年くらい前だけど、コンビニと比較されて、こんな風に評価されていたとおもう。
コンビニに置ける商品の数は物理的に上限がある。店舗の大きさには物理的な制限があるからだ。
しかし、アマゾンにはその制限がないから、ほとんど無限に商品を陳列できる。よって、たまーにしか売れないようなニッチな商品でもすべて置いておける。ニーズがあるときには必ずある、という状況を維持することができる。なぜなら商品陳列スペースのコストがかからないから。

つまり、ネットビジネスの真骨頂は、従来のビジネスモデルにくらべて、超絶圧倒的にコストがかからないという点だ。情報メディアも、コミュニケーションも、小売も、娯楽もすべて。
同じ商品を複製的に作る費用(再生産コスト)がゼロに等しいので、コピーしてたくさん売れば売るほど利益が出る、というのがインターネットとデジタルの価値を最大化させる方法だ。

例えば私も昔、自動的にコンテンツが生成・更新されるWEBサイトを100個つくって、そこからクライアントのWEBサイトにリンクを張ってGoogleの検索順位を上げるサービスに関わっていたことがあるが、これも、検索順位を上げるための「バックリンク」を自動的に生成する仕組みなので、開発コストは掛かったが、バックリックの再生産コストはほぼゼロなわけで、あとは売れば売っただけ利益になる商売だ。こういうのネットビジネスっぽい!て、当時思っていた。実際これはものすごいスピードで収益を叩き出した。

ほぼ日手帳の話にもどります。なぜ手帳を作って売り始めたのか?そして成功したのか?
ここからは私の勝手な考えですが、ただの面白いウェブサイトというだけなら、こんなに長く支持されることはなかったでしょう。
「媒体(ウェブサイト)」が「ブランド」になるには、何が必要か?
アクセスを稼ぎつづけるなら、情報の更新性、鮮度とボリューム、つまり利便性を特化してゆくことで、生活に欠かせない存在になってゆく、という道がある。しかしこれは「ブランド」なのか?

ブランドとは「愛着」なんじゃないかと、私は思う。

利便性の極地に「愛着」はないんじゃないかと。
アマゾンに愛着はあるか?
グーグルやヤフーに愛着はあるか?
NTTやソフトバンクには愛着はあるか?

ある人もいるかもね。
では、アップルに愛着はあるか?と聞かれると、ある!と答える人は多いと思う。
これが「ブランド」ではないだろうか?

なにが言いたいかと言うと、
ほぼ日には「愛着」を感じている人がとても多いように思える。その「愛着」を育てたのが「手帳」なんだろうと思うのだ。いや、かなり戦略的に考えた上で「手帳」でなければならなかったのではないか、とすら思える。

WEBサイトは、持ち歩いたり、撫でたり、触ったり、汚しちゃったり、ということができない。いくら「ほぼ日刊」とはいえ、ほぼ毎日のように読者にアクセスしてもらうことができても、「愛着」を感じてもらうために必要なところまで距離を縮めるには限界がある。ブラウザの向こう側。クラウドの向こう側。
この限界を突破させるには、毎日持ち歩き、撫でたり、汚しちゃったりするもので、なおかつ毎日見て、書き込んで、読み返して、カスタマイズするようなプロダクトが必要だ。読者の生活そのものに、人生そのものに入り込めるもの、それはなにか?「手帳」だ!ということなんじゃないだろうか?

毎年使い続けている人も多いだろうね、ほぼ日手帳。
ほぼ日手帳って、プロダクトとして優れているというだけではなく、「ほぼ日」というWEBサイトを「ブランド」にするために必要だったの強力なツール。今更だけど、これってとんでもない発明だと思う。


このように、技術として「愛させる方法論」というのがあるならば、ぜひ知りたい。
好きだから毎日でも会いたい!ではなく、毎日抱きしめるから愛着が湧く。そういう生理って人間にはあるのかもしれないよね。

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