イーゴン自治区

ファイナルスパンクハッピーの頭にパンを乗せたのは祖父江慎だった。そしてミント・エクソシストは最高だ。

2020/01/10 FINALSPANKHAPPY 菊地成孔 小田朋美 シャーマン狩り 類家心平 サルバドール・ダリ 祖父江慎
2019年12月に菊地成孔と小田朋美によるユニットFINAL SPANK HAPPYのアルバムが発表された。私はアマゾンミュージックの有料のやつを契約しているので、「サブスク解禁」というアナウンスと共にリリースされる最近の楽曲は、即聴きである。

シャーマン狩りから7年。
私が2010年代に購入した数少ないCDのひとつであり、お気に入りの一枚、小田朋美のデビュー・アルバム「シャーマン狩り」。このアルバムは菊地成孔との共同プロデュース。収録された楽曲そのものには菊池成孔はノータッチで、CDジャケットのディレクションやカバー曲のセレクトやプロモーションなどをプロデュースしたそうだ。

そうして、東京芸大作曲科卒の無名の若き天才、小田朋美がデビューした。
このデビューにして名盤「シャーマン狩り」のアートワークは小田本人のフルヌード。トライバルな感じにデザイン加工されて、ポージングもいやらしくない感じにはなっているが、菊地成孔による大胆なアイデアである。って菊地成孔のブログにも書いてあった。

_SS500_.jpg

「シャーマン狩り」の1曲目は、パフュームの LOVE THE WORLD。
私はこのアルバムが大好きで、車のCDプレイヤーにずっと入れっぱなしで3、4年生活していた。車のエンジンをかけると、いつもこの曲が鳴った。


アレンジメントが素晴らしい。演奏も素晴らしい。そして何より声が素晴らしい。

菊地成孔の選曲は凄いね。
このシャーマン狩りの2年前に、彼のプロデュースでトランペッターの類家心平のリーダーアルバムが作られた。そのアルバム「Sector B」の中のカバー曲は、レディー・ガガの「ポーカーフェイス」だった。これも菊池成孔の選曲センス。凄く良かった。



余談だけど、ジャズ・ミュージシャンって新曲を作る事ももちろんあるけど、既存曲をプレイするじゃないですか?そのプレイの仕方に個性が現れるわけだし、聴く側にとっても、ああ、あの曲がこんなふうになっちゃうんだ、すげー、ってなったりして楽しい。

60年代のビル・エバンス・トリオのアルバムの中で、ディズニーの曲(「いつか王子様が」や「不思議の国のアリス」)が彼のジャズで演奏されていて、これって、同時代の甘いポップソングを大人の味で食べさせてやるぜ的な感じこそ、これこそがジャズ的だなと思う。

幅広い音楽を作る菊池成孔が、自らを「音楽家」や「ミュージシャン」や「アーティスト」ではなく「ジャズ・ミュージシャン」と名乗るのは、とても相応しくて好きだ。
小田朋美のパフューム、類家心平のレディ・ガガのカバーも、ジャズ的であるといっていいと思う。


頭にパンを乗せるのは天才の仕業。
話をFINAL SPANK HAPPYに戻すと、シャーマン狩り以来、7年の年月を経て菊池・小田コンビがどんな世界を見せてくれたのか、ということなんだけど、まずはこのアルバムのアートワークだ。

20190919-finalspankhappy-1184x1184.jpg

ダリみたいに、フランスパンを頭に乗っけて、クラフトワークのように揃いのコスチュームで無表情に並ぶ二人。絶妙なセンスにおぉ、と声が漏れたよ。

▼頭にフランスパンといえば、サルバドール・ダリ。
C2OhkPLVEAAnVpb.jpg


天才・祖父江慎のアートワーク
普段からよく読んでる「WIRED」のサイトにこのアルバムの記事が掲載されていたけど、このアートワークを作ったのって祖父江慎なんだって!なんで?

祖父江慎って、菊地成孔のファンらしくて、彼や彼のユニットのライブに来ては狂ったように踊っているらしい。祖父江さんが一方的に菊地さんを好きで、ラブコールしたみたい。
で、頭にパンを乗せるのも祖父江さんのゴリ押しだったんだって「絶対こうしたほうがいい!この方向でやらせてほしい」みたいな感じで。実際に撮影の見本として、本人もパンを乗っけてた!

その動画がこれだ▼



私が祖父江慎を知ったのは中学1年生の時だった。吉田戦車の「伝染するんです」という漫画の単行本の装丁・ブックデザインが恐ろしく狂ってて、漫画の内容と相まって「この本は芸術作品だ!」と感動したのを覚えている。この本のブックデザインをやったのが祖父江慎という人だった。
t2F20162FE1453442356463_2999_1.jpg

この本のデザインのコンセプトは、「デザインの素人の祖父江という男が、見様見真似で一生懸命がんばって作った本」なのだそうだ。同じ内容のページが何ページか続いたり、印刷がずれていたり、いろんなところが間違った作りになってる。本のカバーも和紙みたいな紙だったし、本当に手作りで一生懸命だれかが製本したような仕上がりだった。面白すぎて、無駄に2冊買ったよ当時。

そんな祖父江慎が執着したこのアートワーク。よくわかんないけど、それが最高。


まさかのBECK
楽曲について、やはり気になるのはカバー曲。今回はどんな曲をカバーするのかドキドキしていたが、想像の斜め上、まさかのBECKのデビルズヘアカット!

▼BECKの原曲

この曲を、主にドラムとピアノの構成でやってます。ぜひ聴いてほしい。


エイリアンセックスフレンド
オリジナルの曲で良かったのは、6曲目の「エイリアンセックスフレンド」。
曲もいいけど歌詞が素晴らしい。


「愛人」や「不倫相手」や「禁断の恋」とかじゃなくて「エイリアンセックスフレンド」というのがいい。いつかここからいなくなることがわかっている、絶対にわかりあえない、愛してくれることも無い、そんな相手を想うラブソング。ウェットじゃないのがいい。むしろエレガントで都会的。

歌詞の内容が、小田朋美目線で菊地成孔のことを歌っているように勘ぐらせる作りにもなっていて、ニクい。
なんか菊地成孔って、小西康陽にあこがれてんのかな?と思うことがよくあるんだけど、この曲も野宮真貴が歌ったら、もっと軽くてドライなピチカート風になちゃうのかな?って思ったり。そんな風に想像しながら改めて小田朋美の歌声を聴くと面白い。


アイスクリーム溶ける前に、ああ
あと「ヒコーキ」も良かった。好きな人とのお別れの歌。これも爽やかでいい。

(サビ)
ヒコーキに乗ってどこに行こう
過換気になっても夢を見よう
大好きな人に会いに行こう
アイスクリーム溶ける前に ああ!

「ヒコーキに乗って」と「過換気になっても」のライミングとかも面白いけど、このサビの最後の「アイスクリーム溶ける前に ああ!」のとこが、すごくPOPで好き。

「世界が終わる前に」みたいなことなんだけど、こんなアイドル歌謡曲みたいな陳腐なフレーズを2020年になって聴くことになるなんて。何周か回ってめっちゃ良いフレーズに聴こえて不思議。
爽やかで恥ずかしくて何回も聴いてしまう。


FINAL SPANK HAPPY。ニュー・アルバムのタイトルは、ミントエクソシスト(mint exorcist)です。

ぜひ聴きましょう。


コメントをどうぞ。 現在0件

あなたが最初のコメントを書くのです。