イーゴン自治区

「年之丸」と「髭年之丸」

2021/06/04
美術が好きでしてね。趣味で調べてるだけなのでいい加減なものではありますが、日本の絵画史というか美術史を遡って調べてくと、この国の「美術」の様式を作り、その後のベースを作ったのは、「狩野派」と「歌川派」という歴史上類を見ない、この2つの絵師集団のようでして、いろいろ調べていくと面白かったのでご紹介したいと思います。

狩野派
狩野正信を始祖としてはじまり、室町幕府から江戸幕府まで、歴代の時の権力者のおかかえ絵師集団として約400年に渡って系譜を継承し続けた。とんでもねぇ集団。事実上、国家公式のビジュアルアートのブランドと言える。
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(狩野永徳/唐獅子図)



歌川派
狩野派と入れ替わる、というわけではないが、江戸時代後期に歌川豊春を始祖としてはじまり、「歌川〇〇」という名前の画工(画家とは言わないみたい)は総勢で500人くらいいるらしい。
時の権力者をパトロンとした狩野派とは異なり、役者絵や美人画やエロい春画、その時代の風俗などを題材としたものが多く、時にお上に規制されたり発禁の憂き目に合うなど、完全にアンオフィシャルなストリートアートの集団と言える。っていうか民間。

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(歌川国芳/相馬の古内裏)



狩野派は、最後のパトロンであった江戸幕府の終焉とともにその歴史の幕を下ろしたとか。しかしまあ、その末裔はどっかにいるんだと思いますがね。


一方の歌川派はどうか?いまどうなってんのか?
ちょっと調べました。

以下、「歌川派」が面白かったので「狩野派」はまた今度。


ざっくりした系図もあったのですが、
調べたところ、なんか国の研究機関(国立研究開発法人科学技術振興機構)のデータベースサイトに面白い資料が公表されていました。

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※国立の機関が公表している資料なので、コピーライト的なのは大丈夫だと思って紹介しています。

これを書いた「六代目 歌川豊国」という人は、1903年(明治36年)に生まれて、2000年に亡くなっています。最近までご存命だったようですね。っていうか「まだいたのかよ歌川!」っていう驚きがまずあって、で、気になるのは「まだいるのか歌川?」です。
上記URLでご紹介したPDFの資料によると、

歌川派の当主の継承って、一門の会合で決められるみたいなんですが、なんか形骸化したのかな?なかなか開かれなくなってうやむやになってったぽいんですけど、初代歌川国鶴の長女「歌川むら」と結婚したイギリス人のニコラス・キンドンさんていう人がいて、この人がお金を出して開いたのが最後の歌川の会合だったと。
で、このキンドンさんっていう人が、入籍を機に「歌川金屯」と名乗り、その子孫は横浜在住、という事らしいです。

という事で、このキンドンがラスト・オブ・歌川、最後の歌川か?と思うじゃん?

違ったんですよ。

この資料を書いた六代目豊国に息子がいましたよ。

2000年に六代目が亡くなって、2001年1月、三男の博三さんが正式に7代目歌川豊国を襲名したようです。現在83歳、ご健在です。この人が歌川派の今の当主。「髭年之丸」を持つ者です。


「年之丸」と「髭年之丸」

歌川派には家紋というか「ブロンドロゴ」みたいなのがあって、こういうマークです(詳しくは前述のPDF参照)。
漢字の「年」っていう字をゴニョゴニョってしてギュっとして、なんかバネみたいな形にしたリングみたいな図案です。由来は不明。

▼年之丸(としのまる)
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これは、歌川派の画工(画家とは言わないらしい)の版画作品に落款(サインみたいなもの)として書かれてたり書かれなかったりするみたいですね。私も海外の美術館に収蔵されている作品も含めて、ネットで見られるものはいろいろ見ましたが、あんまりこのマークは入ってなかったですけどね。まあ、それはそうとこの「年之丸」ですが、歌川の当主のマークはちょっと違うんです。これです。

▼髭年之丸(ひげとしのまる)
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ちょっと違うんです。上記の赤い丸で囲んだ部分に、一本ラインが入っているんです。これを「髭」っていうらしいんですが、ゆえに「"髭"年之丸」だそうです。

ということで、7代目歌川豊国さんが現在の「髭年之丸」保持者です。
私はまだこの7代目の作品にお目にかかった事は無いのでどんな感じの画風かはわかりませんが、Wikipediaによると作品に「勧進帳(十二代目市川団十郎)」とあった。十二代目市川団十郎って今の海老蔵のお父さんだから、ああ、平成の時代でも、歌川の浮世絵師はリアルタイムの歌舞伎役者の絵をかいてたんすね。

ひょっとしたら、今の歌舞伎役者の事を描いている浮世絵の画工って、まだいるのかもしれないですね。



個人的に、この歌川派に代表される「浮世絵」っていうのは、西洋の視覚芸術の歴史を変えた一大ムーブメントだと思ってて、世界に類を見ない独自性がある点と、国内ではエスタブリッシュメント(権威に寄ったもの)ではないポジションにあるという点も含めて、現在の日本のアニメーション文化と非常に似ているし、願わくば、浮世絵とアニメをつなぐグラデーションがちゃんと存在しているといいな、と思っています。

日本の視覚芸術、特に二次元の表現って、今も昔も世界で最も革新性が高いものだと思うから、いまアニメーションを作っている人達は今まさに芸術の最前線にいて、それはもう尊い画工だと思っています。俺にとっては、彼らこそ髭年之丸。

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