マルタン、メゾンやめるってよ/「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」と「We Margiela マルジェラと私たち」

2022/06/19
今週はU-NEXTでドキュメンタリー映画「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」(2019年)と、「We Margiela マルジェラと私たち」(2017年)の2本のドキュメンタリー映画を見ました。とても興味深く観ました。ファッションについてあまり詳しくはないのですが、自分がちょうど高校生くらいのころにいろんなカルチャー雑誌とか、テレ東の「ファッション通信」などによく取り上げられてたので、概要はある程度知ってはいました。いつごろまでどんな服を作っていたかもなんとなくは知っていました。でも、ちゃんと時系列にまとめて知る事ができて良かったです。面白かった。

今週観た、マルタン・マルジェラ本人のナレーションで語られる「マルジェラが語る~」はとても面白く、創作の工夫した点や、各作品やショーが作られた当時のいきさつなどを、まるで「良い思い出」のように語られているような印象をうけました。マルタンの語り口からは、ナイーヴで実直な印象を受けました。きっと彼は、幼少期の家庭環境、アントワープでの学生時代、ゴルチエでの修業時代、メゾンの設立から売却、2008年の引退にいたるまで、「モノづくり」への好奇心と創作意欲の純度のようなものを変わらない強さで燃やすことができた人なのだろうな、と思いました。

一方の、「We Margiela マルジェラと私たち」は、マルタン本人は一切登場しない。その代わりに、パートナーだったジェニー・メイレンスが声だけでインタビューに応じている。ジェニーの他にもかかわりの深いスタッフやアシスタントたちがインタビューを受ける形で作中に多く登場します。こっちも面白かった。


私は今回、「マルジェラが語る~」を観た後に「We Margiela~」を観ました。
作品が公開された順番は「We Margiela~」のほうが2年くらい先だったようですけどね。


「マルジェラが語る~」は、クリエイター本人による、自身のアーカイブやポートフォリオの解説、といった「主観的な物語」な感じだったわけですが、もう一個の「We Margiela~」のほうは、なんというか、表現が難しいですが、いわば「青春の燻り」のような焦げ臭さみたいなものを感じました。マルタン・マルジェラ以外の人々の青春がちゃんと終わっていない。ざわつき。どよめき。
『桐島、部活やめるってよ』に似た構造で、『マルタン、メゾンやめるってよ』っていう感じです。
マルタンは元々メディアに一切出てこない人なので、観ているこっちとしても、ずっと「不在のヒーロー」なわけで、そういう点も「桐島~」っぽい状況を観せられている感じというか。

「We Margiela~」では、その「不在のヒーロー」との想い出や彼と過ごした青春について、人々が振り返って語っていますが、一方の「マルジェラが語る~」で淡々とあの頃のエピソードを、内緒話を打ち明けるかのようにマルタン・マルジェラ本人が語っています。この温度差が結構すごいです。
この2本を観比べてみるのも、だいぶ面白いですよ。

「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”」




「We Margiela マルジェラと私たち」



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