宮台真司のこと

2022/12/30
「違和感」や「予感」というレベルの感情がある。ポジティブなのかネガティブなのか、その時点ではまだわからないレベルの兆し。能動的か受動的かに関わらず、外部からの刺激に私達の体や脳は「反応」する。

何かをみて、なにかを感じる。
このような「違和感」や「予感」というのは、スピリチュアルなものとしてあつかわれる場合が多くあるが、きっとそういう神秘的・霊的・シックスセンス的なものでは全然なくて、ただの「反応」の一つだと思っている。ラベリングされていない感情。まだ名前がついていない感覚。仮にこれを「直感」というとして、たとえば今っぽく言うと、いわゆる「ディープラーニングの成果」のようなもの。無自覚な最適解って感じかもしれない。理由はわからないが、こういう答え(リアクション)が出た。という感じ。

これまでの経験の蓄積によって作られた「俺内データベース」がある。経験値の塊のようなものだ。
これに対する刺激に対して、どのような反応のパターンがあるのか?きっと、いくつかの主要なパターンがあり、例外的なレアな反応もいくつかあるんじゃないかと思う。

「あれ?なんかいつもと違う、変な感じがする。」これが、直感の本体何じゃないかと思う。

今まで全然大丈夫だったのに、急に花粉症になった、甲殻類アレルギーになった、という類の、ある要素の蓄積が許容量をオーバーしたことで、いつもと違う反応が現れる。というケースもあるだろう。


私達は、いろんなニュースを見たり、エンタメや芸術に触れたりする。
他人と話したり、自然から恩恵、あるいは厄災を受けたりもする。

個々に様々な情報(経験)を蓄積しながら、人間たちがそれぞれに、めっちゃ生きている。
個別の差異はありつつも、共通体験を持つ集団は、同じ時期に同じような反応をするだろう。

言語化できない予感や違和感。いい感じ、やな感じ。

私たちが感じたことは気のせいでもなんでもない。間違いでもない。
じゃあ、私たちに一体何が起こっているのか?
もしこの状況を理解したい場合、どうすればいいのか?
神に祈るか?そんなバカな。


このような疑問に対して言葉を持ち、ヒントをくれる人たちがいる。

例えば人類の「歴史」を知ることで、そこからヒントを得ようと試みている人たち。
社会科学の分野からファクトを根拠にロジカルに説明してくれる人。
生物学や脳科学といった、サイエンスの立場から教えてくれる人もいる。
映画や文学や芸術作品によって、体験を与えてくれる人もいる。


ありがたい。
自分と同時代において、そういう役割を担ってくれている事を心から感謝しているし、尊敬している。


例えばいま、宮台真司がいる。

いま私は40代、1990年代には10代だった。宮台真司はその頃に世の中に出てきて、私は彼の著作を通じて「社会学」という分野を知り、興奮し、影響され、大袈裟かもしれないけど「自分たちの場所はどうなっているのか」を知った。「自分はこういう時代に、こういう社会に生きているのか」という物語を感じた。で、長らく忘れていた。20年くらい忘れていた。

しかし最近だ。2022年に入って、宮台真司をYOUTUBEのコンテンツでよく目にするようになった。NewsPicksとか、Pivotチャンネルとか、それ系の対談コンテンツに出てて、切り抜き動画とかも結構作られたりしていた。
2022年の日本は、戦争とか疫病とか暗殺とか不景気とか、とにかくまあ社会不安の激アツリーチの真っ最中なので、人々はモヤモヤした「まだ名前のない感覚」を同時に感じていて、それゆえに「言葉を持つ者」のニーズが高まっているんだろうなと思う。

とはいえ、あの"宮台真司"が喋っているのを久しぶりに観出したら止まらなくなってしまった。私の中のモヤモヤしていた違和感が、彼の言葉によって輪郭を得ていく感じがした。答え合わせのような感じだ。
端的でわかりやすい。無駄なことは語らず、要所要所、まるで大事なポイントに真っ赤なマーカーでアンダーラインを引くように「クソ」だの「クズ」だの「ヘタレ」だの、刺激的な表現でわざと強調し、聴く者を挑発する。

彼の言葉を聞いて「傷ついた」と反応する人も少なくないと思う。「腹が立つ」「気分が悪い」と感じる人もいるでしょう。
当然だと思う。宮台真司は、私達の「患部」を指摘しているのだから、それは痛いよね。


いくつかの動画コンテンツを続けざまに観て感じる。宮台真司はどこでも同じ事を語っている。遡って5年前、10年前の言葉も聞いてみる、記事を読んでみる。いまと全く同じ主張をしている。ブレがまるで無い。本気でメッセージを伝えようとしているのをとても強く感じる。

そんな中、11月29日、彼は殺されかける。
ニュース速報で観た。恐ろしいと思った。寒気がした。

数日後、絶対無理レベルの重症にもかかわらず、メディアに登場して「全然ビビってねぇから。」と言い放つ。
私は、同時代にこういう人を他に知らない。



「宮台真司」に出会うタイミングは人それぞれだ。一生出会わない人のほうが多いと思うし、彼を知らなくても死にはしないので特に強くレコメンドをするつもりもないが、もし興味を持ったら、とりあえず直近のコンテンツから観てみるといいと思う。いろいろとクリアになることがあると思う。




<ピックアップ/私の印象に残った箇所(意訳)>
  • 「騙されていたことを認めたくなくて、敢えて騙され続けることを選んだ人たちが、行政、企業、アカデミズムの分野に、腐るほどいるんです。(裸の王様問題)」
  • 「"中抜き構造"が無能な人間たちを生産性に関係なく温存している。これがあるから既得権益を動かせず、新しい産業構造を作れない。」
  • 「学習機会の階層的な不平等があるが、このことには努めて敏感になるべきだ。(ハビトゥス問題)」
  • 「一人で何でもできるようになろうとするのは、はっきり言ってクソで不合理。凸と凹が補い合うのが生産性の高い共同体だ。」


ほかにも色々あるからググって。年末年始のお休み中に丁度いいと思うので、お時間あればどうぞ。

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