映画「別れる決心」考察(まだ観てない人用)

2023/02/19
パク・チャヌク監督の新作「別れる決心」を、映画館にわざわざ行って観ました。
私パク・チャヌク作品のファンなんで。
パク・チャヌク映画の世界観の独自性とクオリティの高さは、撮影監督のチョン・ジョンフン&脚本家のチョン・ソギョンとのチームによるものです。ということは、厳密に言うと、私は「チャヌク&ジョンフン&ソギョン」のファンということになります。

パク・チャヌク監督作品としては、前作「お嬢さん」から5年ぶり。待っていました。

新作のタイトルは「別れる決心」。予告編はこれだ。



先に言っとくと、今回のこの作品の撮影監督はチョン・ジョンフンじゃないんすよ。なので、いままでのパク・チャヌク作品にあった、耽美的ともいえる独特な高級感はあんまり無かったです。でもパク・チャヌクですからね、演出の味はご健在といった感じでしょうか。

この記事は、これから見る人に向けて書いているつもりです。考察やクリティカルなネタバレはしてません。
ただ「プロモーション」とか「お願い口コミ」とかで書かれてることと、実際に見た内容がちょっと違うと思うので、それは書きます。
あと、内容的に一般的な日本人だと多分よくわかんない事があるから、それも書いときます。

この作品の主要登場人物は、優秀な男性刑事(韓国人)と殺人事件の被疑者女性(中国人)です。
この被疑者女性は中国から密入国で韓国に来た女性というキャラクターで、彼女のおじいちゃんは、かつて朝鮮半島独立のために南満州で日本軍と戦った英傑、という設定。つまり、彼女のルーツであるおじいちゃんは、今のように韓国と北朝鮮も分かれて無かった時代、朝鮮半島の北側に日本が満州国を作り朝鮮半島も統治していた時代に、「満州にいた朝鮮人」ということになるかと思う。
ちなみに、現在の中国には190万人くらいの「朝鮮族」が、旧満州エリア(北朝鮮のさらに北)に、"少数民族"という扱いで存在している(wikipediaで調べた ※歴史認識間違ってたらすんません)。
本作のヒロインである被疑者女性の詳細なルーツはわかりませんが、まあ、そういう背景を持った女性が、中国からどのように密航して来て韓国でいかにして生きているのか、とうことが、私はまだまだ勉強不足なのでわかりません。いま調べてます。
そんな彼女は韓国語を話すのが苦手なので、劇中、中国語で話す事が多いです。スマホの翻訳アプリを使ったりもします。
したがって、主人公の韓国人男性刑事との会話は円滑ではありません。その「たどたどしさ」や「韓国語会話の齟齬」のニュアンスは正直私にはわかりません。わからない状態で、それを我々は日本語字幕で観ることになります。

私は理解できませんでしたが、おそらく、「カタコトの日本語を喋る帰国子女の可愛らしさ」のようなものが、この映画におけるロマンスの着火点になっているのではないかと思います。さらには、そういう「カタコト帰国子女」に対して若干ナメた態度というか、見下した視線も含んだ「アンフェア」な、高低差のある関係性が彼らのスタート地点なんじゃないかと思います。まあ、私の推察ですけどね。


あと、この映画のレビューとか宣伝文句とかで、「官能的」とか「大人のロマンス」とか「ファム・ファタール」とか「エロティック」とか、そういう常套句で飾られてますが、全然そういう感じじゃないんで。シャロン・ストーンじゃないんで。
みんな「ファム・ファタール」って言いたいだけなんじゃね?とすら思います。その気持はわかります。言いたいよね、「ファム・ファタール」。

むしろ、この映画が描き出しているのは「普通の恋」だと思います。

下品な俗物と暴力にまみれた異常な人生の途中で、ふと、手が触れ合ってしまった。
そんな二人の普通の恋とその顛末。

パク・チャヌクの映画って、だいたいこういう話じゃないのかなと思います?


「別れる決心」面白かったです。
勉強しながら、もう2回くらい観ます。

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