映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」考察(まだ観てない人用)

2023/03/05
さっきシネコンで「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」という映画を観てきました。
本当にマジで面白かったので、忘れないうちに感想を書いておこうと思ってこれを書いていますが、ネタバレはしてませんし、あらすじすら書いていませんので、大丈夫。

例えば、近所のファミレスに大のおとなが集まって、こんな会話をしているとします。

「この社会の中で、この人生の中で、一番クソかったるい事ってなんだ?」

ある人は「確定申告だ」と。ある人は「親の介護よ」と。また別の人は「子供が言うこと聞かねぇ」と。
日本と諸外国では、ローカルルールがそれぞれなので若干の差はあれど、人生の折り返し地点を過ぎた大人たちが抱える困難っていうのはこんな感じ。
このような「等身大の困難」と対峙する時、多くの人はこう思うかもしれません。

「くそ!なんだこれ!なんでこうなった?」

さらには

「いつからこうなった?どこでこうなったんだ?」

これは多くの人間にとって普遍的な問題かもしれません。
おそらく、大昔の人も同じように思ったかもしれないですね。

近所のファミレスに集まった私達の中の誰かがこう言います。

この普遍的な人生のクライシスと、俺たちは戦わなければならん。いつまでもこんな事は続けられない。こんなくだらないことはもうやめにしよう。
しかし、どうやって・・・?

なんみんな、人類の叡智ってなんだかわかるか?

長い間、頭のいい天才達が様々な学問や研究を積み重ねてきたが、とにかくそれらの目的は、人間を救うためにあるんだ。そうでなければなんのためにやってるっていういうんだ。そうだろ?
最近だと、最先端の科学の一つである量子力学と、紀元前500年からある仏教哲学との間に類似性があると言われているんだ。量子力学と仏教だ。一見すると結びつきそうもないよな。でもそうなんだよ、「同じ」なんだよ。

もう20年以上も前、俺たちがまだ若かった頃「マトリックス」ってあったろ?流行ったよなあれ。その映画「マトリックス」はこの仏教の世界観を表現している。この世界は無数に並行して存在している。今俺達がいる世界の他に、また別の世界があるってことだ。もう一つの人生。それとはまた別の人生。っていう具合にだ。そして、「自分がそう思うこと」、つまり自分の認識だけがその世界のすべてなんだ、ということを描いている。自分が「そういうもんだ」と認識することが現実でありそれ以外は存在すらしないという世界観だ。「唯識(ゆいしき)」という考え方だ。真言密教の大日如来と曼荼羅の世界観だ。

量子力学の実験でも「観察者」の視線が「存在」の有無を左右するとこが証明されている。つまり、誰かが見ていないと、ものは存在しない、見るからものは存在する、とまあ、ざっくりいうとそういうことだ。シュレディンガーの猫とか、スリット実験とか、量子デコヒーレンスとか、そういうやつだ。ググれ。な、さっき言った仏教とほとんど一緒だろ?

君が信じたから、俺は存在する。
俺が信じるから、君はここにいるんだ。
さあ、クッキーをお食べ。
あらゆる事は起こりうる。可能性を信じるか?
君が映画スターだったかもしれないこと。
君が俺と結ばれなかったかもしれないこと。
君も、俺も、人間にすらなれなかった世界線のこと。

全てはあり得るし、すべての価値は同じだ。
だとしたら、全てに価値なんて無いのかもしれないな?
おっと、想像したら少し怖くなってきたな。ごめんごめん。


「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」という映画は、いわゆる普通の人生において、最もクソかったるい状況に置かれた、ある小さな家族のお話です。

日本でいう「確定申告」の書類に不備があって、税務署でそのやり直しを指示されてブチギレそうになった、個人事業主の家族の話。
「くそ!なんだこれ!なんでこうなった?」
「いつからこうなった?どこでこうなったんだ?」

つまり、この作品は、私達のこと、お隣さん家のこと、実家の親兄弟のことです。
この映画を作った人はきっと、ファミレスでさっきみたいな話をして、人生におけるクソみたいな困難なんか、「映画」という人類の叡智(イマジネーション)がぶっ飛ばしてやんよ、という心意気でこれを作ってくれたんじゃないかと思います。

めちゃくちゃ笑えてたのに、最後の方で泣いた。とても感動しました。

マトリックスのオマージュっぽいところはもちろんですが、ウォン・カーワイ作品とか80年代映画とか、本当にたくさんの「映画」のオマージュやサンプリングも散りばめられてて、とても豊かな映画でした。

そして、主人公の旦那役のキー・ホイ・クァンがめっちゃいい。カンフーも凄い良かった。
もっと良かったのは、主人公の娘役のステファニー・アン・スーさんがとんでもなく良かったです。
また何回でも観たい映画です。

ぜひ多くの人に見てもらいたい。特に、年頃の娘を持つ個人事業主の人、おすすめです。


▼予告編

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