いろいろな小さな炎/Edward ruscha

エドワード・ルーシェというアメリカの写真家がいる。いや、いた。
10年前くらいに、死んだとおもう。
上の写真は彼が出版した写真集の一部である。
私は、この人の写真が非常に好きで、5年前にブックオフ100円コーナーで買った、『アメリカの現代写真』という本に、ほんのちょっと載ってて、その時に初めて知った。
聞いたことも無い写真家の名前だった。
>>その5年前の記事はこちら と、こちら。

とはいえ、私はまだ、これらの写真集の実物を見たことも無ければ、中身のすべての写真の画像データすら見た事が無い。
しかしながら、私はもうわかっているのだ。
彼の写真は、そのビジュアルに本質があるわけではなくて、そのコンセプトに魅力がある。
極端な事を言えば、すでに表紙とそのタイトルだけで完結しているといってもいい。
彼は1972までに15冊の写真集を出版した。
01『26のガソリンスタンド』
02『いろいろな小さな炎』
03『ロサンゼルスのアパート』
04『サンセット小路』
05『34のパーキング場』
06『ローヤル・ロード・テスト』
07『名刺』
08『九つのプールと一枚のこわれたグラス』
09『クラッカー』
10『リアルエステート・オポテュ二ティー』
11『ベビー・ケーキ』
12『何本かのヤシの木』
13『レコード』
14『ダッチ・ディテールス』
15『カラード・ピープル』
右の写真を見れば、他の写真集の内容もどんなものか、容易に想像ができると思う。
ただあるがままに、設定したテーマのものをいつくか撮って集めた写真集。特に気になるのが、『名刺』という写真集だ。おそらく、何枚かの名刺の写真が撮影されているだけだろう。
下の写真を見て欲しい。

▲これは、『26のガソリンスタンド』という写真集の中の一部。

▲これは、『九つのプールと一枚のこわれたグラス』という写真集の中身。
どうでしょうか。こういう写真集を作る人なのだ。
おそらくそれは「写真」でなくても良かったのかもしれない。
「ビデオ」でも「録音したカセットテープ」でも良かったのかもしれない。
なので、彼は写真家なのか、という風に考えると、そうでもない気もする。
私は彼の、世界に対する姿勢やまなざしに感銘をうける。
俳句の達人のような潔さや深みすら感じるのだ。
自分が世界に存在したという事を証明する、極めて簡潔な方法のような気がする。
生活や時世、文化、そして彼のビューポイントと世界における座標。
とても私的でシンプルでありながら、そのフォーマットは汎用的だ。
私が「自治区ラボ」でみなさんにご協力いただいている事は、
彼へのオマージュといってもいいかもしれない。
『20の彼等のお金と、犬の前足』というタイトルになるかなと思う。
収集し記録する事、蓄積する事、編集する事。
そして、偶然の不確定要素。
私が考える「クリエイション」とはこういう事に尽きる。