夏のデフォルト
丁度、フジロック行っている人も多いと思う。よほど暑いんだろうな。
私は家にいて、焼きそば食って、麦茶飲んで、モナ王をかじりながら、
フジの26時間テレビ観てる。
幸い暑くても風があるから良い。
洗濯物も良く乾き、妻もソファで昼寝している。
夕方になる前に自転車で近所のスーパーにでも行って、
晩御飯の材料を買ったり、タバコ買ったり。
大体、日曜日は、あのスーパーの前には屋台の焼鳥屋が出ているから
何本か買い食いしながら帰ろう。
通り道の公園では、今日もたぶんウッドベースを練習している男がいるだろう。
私がこの街に越してきたころから、週末になるといつも同じ場所で
ボン・ボン・ブン・ボン、と弦を爪弾きつづけている。
イヤホンを付け、メガネをかけた、機嫌の悪そうな長身の中年男だ。
ジャズベースといえば、私はスコット・ラファロが好きだ。
ラファロは、まるで奔放に歌うような、その天才的な残響を残し、
たった25歳で死んだ。
公園のベース男は、どちらかといえば黒人的で、オーソドックスなスタイルだ。
残念だが、私の好みでは、あまりないのだ。
近くの小学校のグラウンドでは、サッカーに興じる子供達の歓声が響く。
子供の歓声とベースライン。あと、蝉の声。
この組み合わせが、近年、私に聞こえている夏の音像。
同じ場所で去年の今ごろ、
土から這い出たばかりの、まだ白い蝉の幼虫が、
コンクリートの電柱、地上3センチくらいのところにしがみついていた。
いかにも、「あぁ、登るとこ失敗したかもな。」といった面持ちの彼を、
あたかも神の気まぐれのような心境で、ひょいとつまみ上げ、
となりの桜の樹、およそ地上2メートルの高さに一気にジャンプアップさせてやった。
夏限定のスペシャルチャンスである。ラッキーだったな、蝉よ。
夏に、そんな「神の気まぐれ」をして天国のポイントカードに点数を貯める度に、
いつも決まって、翌週くらいにホームランバーに「ヒット」が出る。
なんだか速効でポイントが消化されているようで、複雑な気分になる。
蝉の命は1週間くらいのようなので、おそらく気まぐれに助けたあの蝉が死んで、
そいつからの一応の礼なのだと思って、ありがたくもらっておく。
蝉が死ぬと、ホームランバーが当たる。
基本的に私の夏は、いつもまあ、こういうものなのだろう。