湯気
2009/10/12
一年に一度やってくる、私が最も感傷的になる瞬間が、あれだ、
朝起きて寒い。
これだ。
これがなんともせつな寂しい。
今年の「朝起きて寒い」は、9月の最初のほうにもう済ませたから、
最近に至っては、ああ、またか。また寒いのか。
と、往生際悪くもぶつぶつと文句を言いながら、ぐずぐずと蒲団から這い出す。
肩をすぼめてキッチンへ降りて、やかんでお湯を沸かす。
うちのやかんは、沸騰するとピーって鳴るやつだから、
ピーっていうまで、顔を洗って、タバコを一服して待つ。
窓から外を見ると、すこぶる天気が良かったりするもんだから、
またこれが、なんか切ない。
昨夜もTシャツで寝てしまった。
一昨年くらいに買った、無地のグリーンの半袖Tシャツ。
スウェットパンツを脱いで、適当なものに履き替えようと
Tシャツとパンツでうろうろしていると、
少し離れた姿見の大きな鏡に映る私が目に入った。
トランクスが無地のオレンジ色だった。
グリーンのTシャツの下に、オレンジ色のトランクス。
「・・夕張メロンかよ。」
と、ひとりごちる。
ピーって、やかんが呼ぶので、私は夕張メロンのまま、
「はいはいはい、」と、お母さんみたいに小走りで火を止めに行く。
頂きもののコーヒーメーカーは、全然使っていない。
違いのわからない私には、インスタントコーヒーで十分なんだ。
気の利いた音楽を流して、やかんの湯気と戯れて小躍りしていると、
妻が起き出して、階段を下り、キッチンに顔を出す。
「なにしてんの?なんか着たら?」
「ああ。でも今朝の俺、夕張メロンなんだよ。」
「なにが?」
「ねぇ、コーヒーとか飲む?」
「飲む。」
秋は丁度いい季節のようで、何かが少し足りない。
なにが足りないのかは、未だにわからないのだけど。
朝起きて寒い。
これだ。
これがなんともせつな寂しい。
今年の「朝起きて寒い」は、9月の最初のほうにもう済ませたから、
最近に至っては、ああ、またか。また寒いのか。
と、往生際悪くもぶつぶつと文句を言いながら、ぐずぐずと蒲団から這い出す。
肩をすぼめてキッチンへ降りて、やかんでお湯を沸かす。
うちのやかんは、沸騰するとピーって鳴るやつだから、
ピーっていうまで、顔を洗って、タバコを一服して待つ。
窓から外を見ると、すこぶる天気が良かったりするもんだから、
またこれが、なんか切ない。
昨夜もTシャツで寝てしまった。
一昨年くらいに買った、無地のグリーンの半袖Tシャツ。
スウェットパンツを脱いで、適当なものに履き替えようと
Tシャツとパンツでうろうろしていると、
少し離れた姿見の大きな鏡に映る私が目に入った。
トランクスが無地のオレンジ色だった。
グリーンのTシャツの下に、オレンジ色のトランクス。
「・・夕張メロンかよ。」
と、ひとりごちる。
ピーって、やかんが呼ぶので、私は夕張メロンのまま、
「はいはいはい、」と、お母さんみたいに小走りで火を止めに行く。
頂きもののコーヒーメーカーは、全然使っていない。
違いのわからない私には、インスタントコーヒーで十分なんだ。
気の利いた音楽を流して、やかんの湯気と戯れて小躍りしていると、
妻が起き出して、階段を下り、キッチンに顔を出す。
「なにしてんの?なんか着たら?」
「ああ。でも今朝の俺、夕張メロンなんだよ。」
「なにが?」
「ねぇ、コーヒーとか飲む?」
「飲む。」
秋は丁度いい季節のようで、何かが少し足りない。
なにが足りないのかは、未だにわからないのだけど。