エディ
2010/04/27

「このネブラスカのトウモロコシ野郎!」
という言い回しがある。
これは、子供の頃に読んだ「フォレストガンプ 一期一会」の中にあった一文である。何か文章を書くときには、いつかこういったフレーズを使いたいものだ、と幼少の頃からタイミングを計って来た。しかしながら最近ようやくわかった。このフレーズを使うタイミングはこの先も恐らく無い。
「このネブラスカのトウモロコシ野郎!」
これは、フォレストガンプがネブラスカ州のチームとのフットボールの試合のシーンで出てくるフレーズだ。ネブラスカのチームの連中にフォレストガンプ側の選手が口汚く野次を吐くシーンである。
ちなみに、ネブラスカ州というのは、アメリカの中部に位置し、北はサウスダコタ州、東側はアイオワ州とミズーリ州、西側はワイオミング州とコロラド州、南側はカンザス州に接している。「ネブラスカ」とは、現地のインディアン部族のオマハ族の言葉で「浅い水」という意味だ。なによりトウモロコシの生産が盛んなことで有名である。
私はこの「フォレストガンプ 一期一会」の中でこのフレーズに出会ってからというもの、このような、いかにもアメリカ人が言いそうな差別的なフレーズに、よもや憧れにも似た感情を抱いてしまったのである。
それ以前から、傾向はあった。エディ・マーフィー的なブラックジョークや差別ネタに対して、やはり私は「いつかこういうの言いたいなぁ。」と思っていた。
とはいえ、実生活の中でこういった差別的な発言をすると、結構な割合で怒られたり、学級会で問題になったり、泣いちゃうコとかがいたりするので、いわゆる自主規制という配慮が必要であった。
私は見た目が無駄に真面目で誠実そうに見えるため、なかなかこういう事は口に出来ない。ギャップが強すぎて、ショッキングな発言ととられるケースが、まま、ある。
同時に、本当に心優しい一面も持ち合わせているので、いつからか本当に「こういう事は言っちゃいけないぞ。」と心から思うようになったのである。
私は想いを馳せる。
広島県出身というだけで「もみじまんじゅう!」と言われ、
心を傷つけられた転校生の少年の事を。
沖縄県出身というだけで「BEGIN」とあだ名をつけられた、
新学期のクラス替えの時の君を。
悪意の無いジョークでも、少年少女のハートはガラスだ。
十分に配慮すべきことであろう。
しかしながら、私の中のエディマーフィーは已然としてゴキゲン極まりない状態である。相変わらず「ケーツにキスしな!」とか、全然言っているのだ。
もしこの先、私がネブラスカの方と出会う事があるとしよう。
85%の確率で私はその人に言ってしまうだろう
「このネブラスカのトウモロコシ野郎!」と。
この際、ネブラスカじゃ無くてアイダホ州の方だとしても、
「このアイダホのポテト野郎め!」
と、このくらいの事は言ってしまうかもしれない。
勢いに乗った私は、千葉県民に対してもこうだ。
「おい!落花生!」
こうなるともう、ただの「特産品の紹介」である。
あと、なんだろう、俺、穀物が好きなのかな?とか。
でも、仮にドイツ人に会っても、
「・・・ナチめ!」
とはたぶん言えないだろう。この違いはなんだろうか。
ユーモアというものの根本はこのへんにあるのではなかろうか、と私は思うのだ。
あと、アントニオ猪木の事を「ペリカン野郎」っていうのも好き。
古館伊知郎が橋本真也に付けた「戦う渡辺徹」という異名もいい。
ユーモアってのは、差別や自虐というものが根本にあって、それらの悲しみや残酷さを日向に引きずり出す暴力的な事ではあるかもしれないけど、そうすることで何かをひっくり返してる気がする。
笑えない場合もけっこうあるが、それらが笑えるようにひっくり返せる人をみると、ああ、センスオブユーモア!と思うのであります。もっと凄いのは、笑いのネタにされても笑える人のセンス。
と、まぁ、しばらく有吉を観てきて、
そんな風に感じる今日この頃の日記。
絶対あいつは毒舌じゃないよね。
エディマーフィー寄りのなにかだと思う。