イーゴン自治区

もうすぐ朝が来て

2010/05/15


夜中にタバコが切れる事がよくある。
21世紀の夜はとても便利で、こんな明け方の時間でも開いている店がある。まだ少し肌寒いので簡単な上着を着て、コンビニに向かう住宅街の路地を歩いていると、交差点の電柱の足下にゴミ置き場があった。よくあるゴミ置き場。ゴミにかぶせておく緑色のネットの中には、恐らくパイプベッドの骨組みを分解したであろう姿の、黒いステンレスパイプが置き去りにされていた。まっすぐなパイプや曲がったパイプ。
脇に目をやると、水の入った2リットルのペットボトルがラベルをはがされて、そこに立っていた。夜の住宅地は暗く、街灯に照らされたゴミ捨て場が、角を曲がるごとにぽつんぽつんと点在する。
スポットライトに照らされたようにキラキラと光るペットボトルの前には、CDくらいの大きさのプラスチックの青い皿がおいてあり、白い牛乳のようなものがうっすらと注がれていた。
野良猫の餌付けのようではあったが、ペットボトルがあっては猫は来るまい。

ペットボトルとミルク。

どこかの寂しい猫好きのおばあちゃんが、あのミルクを置いたとしよう。そしてその後に、別の寂しい猫嫌いの主婦がペットボトルを置き、それを阻止したのだろうと私は推理する。
王手間際の将棋の詰めのような、静かな攻防だ。

暗闇の中で待つ猫達は、たぶんミルクにはありつけないだろう。
もうすぐ朝が来て、
次にカラスが来て、
土曜日が始まる。

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