憂鬱と官能
2010/05/27

何年か前にイトウが読んでて「おもしろいよ!」としきりに薦められた音楽理論についての本があった。『憂鬱と官能を教えた学校』という本で、ミュージシャンの菊地成孔と大谷能生の著作だ。
それが、最近文庫になったというので、買ってみようかななんて思ってた矢先に、その本の中身がTVになったということで、ウェブで探したところ、ありました。
『憂鬱と官能を教えた学校』TV
これさっきまで見てたんですが、
とてつもないインパクトを受けました。
非常に面白い番組です。
私は子供の頃にピアノを習っていまして、人並みにバイエルとかもやりましたよ。あの退屈なやつ。こんなのやってどうすんだよ、もっと実践的な音楽をやりたいのに!と思って、小学校で習うの辞めちゃったんですけどね。
そんで、映画音楽や好きな曲のスコアを買って来てあとは独学でがんばった。子供の頃はアメリカの映画が好きだったという事もあってか、ヘンリー・マンシーニとかジョン・ウィリアムズとか、ああいうハリウッド的な映画音楽が好みで、やっかいなオタマジャクシの塊みたいな譜面を睨みながら、亀のようなスピードで練習してました。
だんだん正しいBPMで弾けるようになった時に、ある事に気がついたんですが、ああいうアメリカの映画音楽って「ジャズ」というものの要素がどうやら入っているっぽいぞ。なんだジャズって?聴くとカッコいいし、わかった感じになるんだけど、やろうと思うとなかなか出来ない。
バイエル的なお勉強の中では教わっていない。
わからない、ああいう風にいい感じに「酒とバラの日々」や「ムーン・リバー」や「ティファニーで朝食を」が弾けないじゃないか。
そして私は、そのころ新発田市の市民会館に丁度来ていた、グレン・ミラーのビッグバンドを見に行く。
もちろん、映画「グレン・ミラー物語」も観てから行った。
そして、あたかも映画「スウィング・ガールズ」に出てくる女の子達のような衝撃を受け、「ジャズやるべ!」みたいな感じになって帰って来たんですが、とはいえね、ひとりだしね。
誰に「やるべ!」って言えっつうのな。
みんなそのころ、あれだ、ドラクエ3やってたよ。
そんなこんなで色々あって、ピアノなんか弾かなくなっちゃったんだけどね。
習うより慣れろ、俺はやれば出来る子だ、という俺内神話がここで一度崩壊して、「ああ、やっぱちゃんと勉強してトレーニングを積まないと駄目か。」って後悔する反面、あのアメリカの黒人ジャズミュージシャン達のことを思うと「あんなスラムのチンピラみたいなのが、こんなバイエルみたいな勉強をするわけねーだろ!絶対なんか違うやり方があるにちがいない。」
と、歯ぎしり混じりに思い続けて、20年経ちました。
そしてこれだ。
『憂鬱と官能を教えた学校』TV
積年の謎が解けるような想いで、
「わかる、わかるぞ!」
という手応えを感じています。
俺、今、ピアノ欲しい。
やっと俺にも、趣味が出来るかもしれない。