イーゴン自治区

「幽霊たち」ポール・オースター

2010/06/24
アメリカの小説家、ポール・オースターの作品「幽霊たち」は、このような一文から始まる。

「まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。ブラウンがブルーに仕事を教え、こつを伝授し、ブラウンが年老いたとき、ブルーがあとを継いだのだ。物語はそのようにしてはじまる。」



主人公のブルーという探偵は、ホワイトという人物から依頼を受ける。ブラックという男を見張って、その行動を報告するという仕事だ。見張る必要がなくなるまでそれを続けるのだ。ブルーはブラックの向いの部屋に住み込んで彼を見張るのだが、一ヶ月、半年、一年たっても、ブラックの生活は単調でシンプル。机で何かものを書いたり読書をしたりする毎日。

何も起きない。
恐ろしいほどに何も。

ブルーはたまに監視をやめて、ぶらりと街に出たりするようになるが、彼は確信している。「なにも起こりはしない」という事を。ブラックと同化するほどにブルーは彼を熟知している。

しかしながらどうだろう。
なにも起こらないものを監視し毎日報告書にまとめる。

やがてブルーはブラックが何者であるかを想像する。
何か裏があるのではないかと想像する。

しかし何も起こりはしない。

やがてブルーはある行動に出る。


この小説は、探偵小説のようなフォーマット上で展開される、抽象度の高い作品といった感じ。安部公房的というかカフカ的というか、何ともいえない読書体験だった。
作品の中に出てくる細かい言い回しやエピソードも面白くて洒落てる。

自己の存在を喪失してゆく主人公。
都市に暮らす人間のアイデンティティ。
私はどうして私か?
彼はいつから彼なのか?

ワラッテイイトモ」という映像作品があったが、
あれは、これに近い感覚があるかもしれないね。





お化けとかは出てきません。

コメントをどうぞ。 現在1件

あなたが最初のコメントを書くのです。

gun

ポール・オースターは大好きで「幽霊たち」は初めて読んだ本でしたね。個人的にはムーン・パレス、孤独の発明、写真家のソフィ・カルをモデルにした人物が出てくるリヴァイアサンが好きです。

2010/06/24 (Thu) 04:58